●行方不明の幼児を発見したボランティアの尾畠春夫さんが一躍有名になった。65歳まで魚屋さんをやった後、きっぱり店を畳んで残りの人生はボランティアで社会に恩返ししたいという生き方はすがすがしい。尾畠さんが幼児を発見した時、警察は子どもを受け取り、尾畠さんには“ご苦労さまでした。後はこちらで”とお引き取り願ったというけれど、毅然と拒否したのはエライ!

警察ともあろうものが、ボランティアおじさんの手柄を横取りしてはいけない。

本誌は全国を巡って素晴らしい人たちと出会ってきた。日本には尾畠さんのような方が大勢いることを知っている。たまたま尾畠さんはテレビに映って話題になったけれど、少しでも住みやすい社会を次の世代に渡すために自分の信じた役割を果たしている人たちは脚光を浴びることなど眼中にない。

毎日のようにうんざりする事件が発生しているけれど、邪悪なものを濾過するかのごとく、善を為している人たちがいる。

●無名の人を一夜にして人気者にするほどテレビの力は大きい。そのせいかどうか、時々、テレビに関わっている人たちの増長が気になる。時代劇では、越後屋はいかにも悪人顔で、実際、本当に悪人だが、現実の社会では見かけは悪人のようでいて実はいい人もいるし、反対に善良そうな顔で腹黒い人もいる。簡単には見分けがつかない。テレビは正邪の判断に長けているのか、事件が発生するたびにたちまち検事と裁判官を兼ねたような発言をする。アブナイ、アブナイ。政治から社会、国際問題、パワハラ、セクハラ、不倫まで森羅万象、一刀両断、時には道徳の先生のような教訓まで垂れてくれる。

●視聴率稼ぎのテレビの正義にあおられないために、本誌はテレビを見る時は国選弁護人になることにしている。法治国家では極悪非道の悪事をはたらいた被告人でも弁護士を付けてもらう権利がある。だからテレビがケシカラン!と糾弾している時は、あえて糾弾される側の立場に立ってみる。先日は、逃亡犯の立場に立ったものだから交番の前を通る時、ドキドキした。

●テレビの威力は神のごとくであるが、この神さまを屁とも思わない人がいる。トランプさんである。CNN、ABCのテレビの他、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなど国際的な影響力を持つ新聞まで敵に回して、誠に豪胆である。日本の政治家がテレビに出たがり、テレビにおもねっていることを考えれば大変な違いである。メディアが全能の神ではないことは、前回の大統領選挙では大方のメディアはヒラリー・クリントンさんのほうが有利と伝えていたことでも分かる。

●トランプさんのスゴイのは、中国への高関税である。いまや中国はアメリカと並ぶ大国で、発展途上国への経済支援で影響力は絶大である。これらの富も本をただせば、技術移転を強要して、あらゆるものを安価に大量につくり出してアメリカに輸出して蓄積したものである。アメリカは鷹揚に構えている間に好餌となった。だからトランプさんのいら立ちは分からんでもない。習近平さんにはマスメディアという目の上のたんこぶはない。第一、選挙がない。気に食わない人物は問答無用で拘束できるから、世論を気にしないで済む。トランプさんを単細胞と見ている日米の知識人も、心の中では快哉を叫んでいるのではないか。

●今度の総裁選では、ことわざのいい勉強になった。首相は野党に疑義を追及されても「鷺を烏と言いくるめる」し、数々の矛盾を突かれても「蛙の面に水(小便)」だった。多くの自民党議員は「長いものには巻かれろ」とばかり、「寄らば大樹の陰」に駆け込んだ。石破さんを支持するなら辞表を書くべきだと「虎の威を借る狐」のような側近もいたし、対立候補を支持するなら冷や飯も覚悟しなければいけないと放言して留任した大臣は「憎まれっ子世にはばかる」を実証した。しかし、「天網恢恢疎にして漏らさず」、いつの日にかモリカケ問題の真実が明るみに出ることになるだろう。

●われわれは政治に無関心でも野球やサッカーや大相撲に興じ、旬のおいしい料理を味わい、旅行に出掛けたり好きな趣味に没頭できるが、このような楽しい生活も根底には“公正と正直”がなければ成り立たないのではないか。  (K.S)